同期のさくら

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「じゃあ、この桜が散ったら居なくなるっていうのは……」 「そう、この時期は桜前線と一緒に日本を北上しているんだ」  あの頃と変わらないはにかんだ笑顔が急に逞しく見えたのは、きっと気のせいじゃないだろう。俺が写真集を眺めていると、 「ねえ、高畑。五月の連休に一緒に桜を見ようか」 「五月? まだ咲いているのか?」 「うん、その頃は北海道だ。五稜郭の桜は素晴らしいよ。また二人で花の下で酒を飲もう。そして高畑の『同期の桜』を聞かせてくれ」  ポケットからスマートフォンを取り出す。互いに連絡先を交換して、ふと視線があうと同期の佐倉は俺に「君が追いかけてきてくれるのを待っているからね」と満面の笑顔で言った。
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