鳶色

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美愛が向かったのは、とある警察署。 茉優香は送検されているものの、その身柄は警察署内の留置所にある。 警察署の前に立つと、足が震える。心拍数は異常だし、呼吸はしているのかしていないのかさえ、分からなくなる。 暴力的なまでの太陽の光が美愛の肌を刺し、熱風がスカートの裾を揺らしていく。 美愛は何度も熱い空気を肺に入れては出し、そして、強く両頬を叩いた。 「がんばる」 自分に言い聞かせるように呟き、美愛は警察官が立つエントランスを抜けた。 古い署内の壁には様々なポスターが貼られ、白かったはずの色も灰色のようになっている。 美愛は階段を上りながら、茉優香に言いたいこと、聞きたいことを頭の中で反芻した。
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