4879人が本棚に入れています
本棚に追加
/831ページ
橘美愛はタタタタタと小気味よいキータッチ音をさせて、本日の事務仕事を片付けている。
忙しいにも程がある、と嘆息しそうになるのを寸でのところで堪えた。
時計は既に二十一時を回っているのに、まだ予定分が終わっていない。
それもこれも、年度末であること。そして、なにより、突然の異動を言い渡されたせいである。
就職以来、経理課に所属していたわけだが、二週間後に営業一課へ営業事務として異動が決まったのだ。
後任に引き継ぎをしなくてはいけないし、営業課での引き継ぎもあると聞いている。
それでなくとも、年度末は忙しいというのに。
ペラッと紙を捲ったと同時に、くうっと小さな腹の虫が鳴いた。
昼食におにぎりを食べたきりだった、と思い出したが、普段から夕飯は食べたり食べなかったりだ。
今日に限ったことではないか、と無視することにした。
最初のコメントを投稿しよう!