錆色

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小さな頃はなんとなく放っておけなくて、遊んでやったりお菓子をあげたりしていた莉生だが、今考えると疑問に思うことも多い。 三歳の頃から、毎日のように外で遊んでいたということは、それだけ母親が居なかったということになる。 そんなに小さな頃から。 それは普通のことだろうか。 仕事をしていたから、という可能性も無いわけではないが、振り返れば美愛の母親が迎えに来たことは一度もなかった。 父親のことを言った時の美愛の冷たさは、思わず莉生の心臓に鋭い氷が刺さるかと思う程だった。 「……美愛は、どんな環境で生きてきたんだ?」 独り言とも言える莉生の呟きに対する答えは、今はまだ誰も持ち合わせていない。
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