東雲色

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それが恥ずかしいとは思っていない。 自分にとっての適量であり、倹約のために必要な経費削減だから、やむを得ないのだと割り切っている。 ただ、仕事以外で人と関わりたくないだけだ。 仕事の話をするのはいい。 でも、昼休憩となれば、雑談をするのだろうし、プライベートな話にもなるだろう。 美愛には話すことがないし、万が一美愛が話した何かのせいで、原西の態度が変わってしまったらと考えると、心臓が凍ってしまうのでは、と思うほど怖い。 一緒に食べるデメリットはあっても、メリットはないのだ。 今日こそは諦めて放っておいてくれないだろうか、と頭の中でぐるぐると言葉を巡らせていると、目の前にいる原西からスパンといい音が聞こえた。 「いってぇ」 「しつこいよ、原西!」 「ちょ、榊さん、暴力反対」 原西の後頭部を持っていた資料の束で叩いたのは、マーケティング部に所属している榊佳奈江(かなえ)だ。
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