東雲色

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美愛が異動した後だけでも、何度か営業部に出入りしていて、その時の様子から、篠原や莉生と仲がいいことは美愛も分かっている。 「しつこいのだって、精神的に暴力になることもあるんだよ」 榊が腕を組んで言った言葉に、美愛の後ろから、おお、という声が聞こえた。 言われた原西も思うことがあったのか、ぐっ、と言葉に詰まっているから、本当に悪気があった訳では無いのだろう。 美愛はこの二週間で、原西は基本的にいい人だ、と感じていたから、しつこいということ以外は、特に嫌悪感までは抱いていない。 「榊の言う通り、ちょっと引こうか、原西」 おお、という短い言葉でも分かってしまった。 そして、続いた言葉に、やはり莉生だと確信すると、何故か心臓がきゅっと音を立てる。
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