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(助けに来てくれた)
そんな大袈裟ことではないはずなのに、美愛は無意識にそう思っていた。
まるで昔交わされた約束を守られているような錯覚に陥る。
違う、莉生は覚えている訳ではない。
勘違いしては駄目だ、とギリッと歯を噛み締めて、両手を強く握り締めた。
はあい、と少し気の抜けた返事をした原西は美愛を見て、申し訳なさそうに眉を八の字にする。
「橘さん、ごめんね。いつか、橘さんがいいと思った時でいいから、ご飯行こうよ」
いつか、なんて来るだろうか。
でも、キッパリ断るのは無難な人間関係でいたい美愛にとっては良くない選択だ。
一瞬の逡巡の後、こくりと頷くだけに留めた。
流されたような返事にしてしまった感は否めないが、それでも原西はニコッと人好きのする笑顔を浮かべて、その場を去っていった。
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