東雲色

7/117
4887人が本棚に入れています
本棚に追加
/831ページ
「本当に捨てろとは言ってないから。まあ、困った時は俺を呼べばいい。助けるくらい、簡単だからな」 『俺を呼べ』『助ける』 そんなにあっさり言わないで、助けることが簡単だなんて言わないで、と美愛は泣きたくなった。 その言葉は特別なんだ。 昔、言われた魔法の言葉は、これまでの美愛の唯一の支えであり、救いだった。 例え叶えられないと分かっていても、『生きろ』と言われているようで縋っていた言葉だ。 だから、本人からあっさり言われると複雑で仕方がない。 まるで約束を覚えていて、それを守ってやると言われているようで、つい期待しそうになる。 そんな甘い考えでは、これから先、独りで生きていけないのに。
/831ページ

最初のコメントを投稿しよう!