東雲色

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「いらない」 「え?」 「助けなんて、いらない」 思わず言ってしまった言葉に、莉生と榊が固まったのが分かったが、一刻も早くこの場から消えたくて、美愛は返事も待たずに走った。 いらない、なんて本当に思ってるのか、自分が分からない。 それでも、考えることができずに咄嗟に拒絶してしまっていた。 もうこれで、莉生も榊も自分を見放すだろう。 純粋な厚意を、それこそ切って捨てたのだから。 人として最低だと分かっているのに、今は受け入れることができなかった。 美愛が全速力で走って辿り着いたのは、建物の四階から出られるちょっとした庭園だった。 リフレッシュの為にと社長が作った庭園は、それほど大きくはないものの、花が咲き誇り、所々に植木も植えられている。
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