東雲色

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◆◆◆ 「美愛」 「ど、うして……!」 ぎゅっと自分の身体を抱き締めて、ベンチに座り、俯いたまま顔を上げてくれなかった美愛が、激しく首を振ったかと思ったら、ゆっくり横に倒れていった。 「危ない!」 慌てて美愛の小さな身体を受け止め、どこにもぶつけなかったことにホッと息を吐く。 「美愛、大丈夫か? 美愛?」 あまり揺らさないよう、美愛の隣に腰を下ろし、自分の身体に凭れさせながら声を掛けてみても、ぐったりとした美愛は反応を返してはくれない。 そっと覗き込むと、普段から色の白い美愛の顔は、真っ青になっていた。 莉生の身体に美愛の呼吸する時の僅かな揺れが伝わっていなければ、生きているのかすら疑ったかもしれない。 華奢だとは思っていたが、こうして触れると折れてしまいそうなほど細く、今にも消えてしまいそうだ。そう思うと、莉生はゾッとした。
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