東雲色

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「気分はどうだ?」 「……きぶん」 ゆっくり開けられた目は、まだ焦点が合っていない。 意識もまだハッキリしていないのか、莉生の言葉を繰り返したが、それは随分と幼い口調になっている。 それがなんだか可愛くて、こんな時にも関わらず、莉生はくすりと笑ってしまった。 「貧血らしい。美愛、ちゃんと食べてないだろう?」 医師から、恐らく重度(・・)の貧血だろうと言われたのだ。 『軽い貧血です』くらいの台詞は想像していた莉生だったが、『重度』と表現されたことに衝撃を受けた。 この時代、重度の貧血になるにはどうしたらいいのか、莉生には想像すらできない。 少食なのは知っていたが、栄養失調で貧血になるほどの食事を、どれくらいの期間続けたらこの状態になるだろうか。
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