茜色

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緊張するもう一つの要因としては、美愛が普通の家族を知らず、どういった雰囲気なのかが分からないということも挙げられる。 手を繋いで歩く道は、莉生にとって久しぶりの、美愛にとっては初めての景色だ。 空にはひつじ雲が連なり、抜けるような青空は、どこまでも広がっているように思える。 ずっと遠く。見たこともない世界の果てまで。 降り注ぐ太陽の光は、昼下がりの優しく暖かいものだ。 ドキドキと煩い心臓を何度も深呼吸をして抑え込む。 それでも、今にも口から飛び出そうとするのだから困ったものだ。 「ここだ」 莉生が立ち止まったのは、大きなマンション前。 立派な建物に、美愛の緊張も更に高まってしまう。
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