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安岡は、自分だけがバレンタインを楽しみにしているのが忍びないとか何とか言って、チョコの効能ばかりを俺に聞かせる。
まるで、洗脳のように。
俺の口の中は甘い苦みしか広がっていかないのに。
楽しそうにしている安岡はいつもより「女子」になっていた。
馬鹿らしい。
そして、とうとうバレンタイン当日がやってきた。
あいにく、その日は曇天の空で雨が降っていた。
冬の雨は冷たい。
俺は昼休みに人づてに安岡が体育館に相手の男子を呼びよせたことを聞いた。
聞いたが、そのあと安岡は見事玉砕したのか、早退したので詳細は聞けずじまいとなった。
何でも相手はバレー部の男子先輩らしい。
県大会で活躍したエースね。
ふーん、って感じだ。
結構、ゴリラみたいなやつだ。何、そいつチョコとか食うの。
いや、偏見はよくない。
チョコの香りのせいで俺はどうやらものすごく苛立っているらしい。
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