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旦那とは、いつのまにかこれほどの月日を寄り添ってきました。
結婚50周年にあたる金婚式の当日は二人でひそやかにすごそうと話していました。
息子夫婦や孫にわざわざ遠方から来てもらうのは酷だと思ったからです。
日頃、料理をいっさいしない旦那が、夕食は俺に任せろと台所に立っていました。
私は包丁を持つ姿にはらはらしながらも、近からず遠からずの距離で見守っていました。
あまりそばに行くと、心配しなくていい、と言うものですから。
旦那が作ってくれたのは、白いごはんに豆腐とわかめの味噌汁、少し焦げたさばの塩焼き、青みの抜けたほうれん草のおひたしでした。
「見た目が悪くなってすまない」
普段自分から謝ることのない旦那はそう言いました。
しかし、私にはどれほど豪華な食事よりも温かみのある食卓に思えました。
「美味しそうにできましたね。ありがとうございます。いただきましょう」
私は心から伝えました。
全体的に塩分がやや濃いのは、旦那の好みだからかもしれません。
それでも、口に運び入れる喜びが損なわれることは全くありません。
旦那は真剣な様子で黙々と食べています。
自分で手がけた料理の評価を心の中で下しているのでしょうか。
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