0000 ラシュタットの白き英雄

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「悪いが、時間切れだ。情報だけでも手に入れてさせてもらう。……にしても、こいつじゃなかったのか」  ジークハルトは足元に転がる生首――クリスタ・ヘンネフェルトの顔を見ながら面倒臭そうに頭を掻いた。 「まあ、さすがにそんなに簡単じゃないか……」  一人つぶやくジークハルトに、戸惑いながらもアマーリエが声を掛けた。 「ジ、ジークハルト……? どうして――」  言い切る前にアマーリエの首が飛んだ。それをした張本人、ジークハルトは周囲を確認してため息を吐く。 「今まで一番交友のなかったやつでもない、と。……なら、その逆か?」  そう言ってジークハルトが目を向けたのは黒髪の女性だった。歳はジークハルトとそう変わらないだろう。目が合うと、彼女は小さく悲鳴をあげた。  周りが現状を飲み込めないでいる中、ジークハルトは徐々に距離を詰めていく。そしてあと一歩で間合いに入るというところで、激痛が走った。  痛みは失せ、背中と左胸が熱を帯びる。視線を左胸に向けると、そこから槍が飛び出していた。  ゆっくりと首を動かし、自らの心臓を貫いた相手の顔を確認する。 「お前か……」  そこにいたのは当然、今ジークハルトが狙っていた人物ではない。どころか、疑ってもいなかった人物である。  ――こんなの、初見じゃ無理だろクソが。     
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