0001 近年稀に見るクソゲー

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 待受画面を開いたまま、少し固まってしまった。少し間を開けて首を傾げた真緒の視線は一点に注がれている――表示時刻。携帯端末の表示時刻は電波時計とは方法が異なるものの、電波が届く場所であれば時刻補正がされるのだが、どうやら真緒の携帯端末の時計は狂っているらしい。  ――ゲームを始めたのが午後九時。そこから体感で四時間はプレイしていたから現在時刻は午前一時前後だと思っていたんだが……。  今日は休日だったが、明日からはまた学校に行かなければならない。午前一時というのは明日の学校に支障をきたさない限界点だった。そのために多少無茶をしてイベントクリアのヒントを得たのだが、しかし、真緒の携帯端末は何度見ても午後九時を示していた。  部屋の壁掛け時計に視線を向けるも、短針は午後九時を指している。そもそも、いきなり四時間ものズレが生じるはずがない。  ――俺の体感時間が狂ったのか?  プレイヤーが短い時間で長い時間を遊んだと錯覚するように、ゲーム内の時間の流れを早めてあるゲームは存在する。  ――いや、だとしてもほとんど時間が経っていないのは異常だ。  考えれば考えるほどによく分からない。いや、分かってはいるのだ。ゲームを始めた時刻と現時刻の差はゲームを終えてからベッドの上で過ごした分の時間しかない。ならば、このわけの分からない現状に辻褄の合う理由は二つしかない。  ゲームをプレイしていた時間が現実に反映されていない。  もしくは、ゲームを終えた時点で時間を遡った、か。     
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