0001 近年稀に見るクソゲー

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 その二つのどちらかにしかこの現状を説明出来ない。が、同時にどちらも現実的な理由ではない。タイムマシンの研究はされていると耳にしたことがあるが、開発に成功したなんて聞いたことがない。  ――だいたい、最初にその技術が使われるのがこんなクソゲーとかあり得ないだろ。  だとすれば、残りはゲームをプレイしていた時間が現実に反映されていない、になるわけだが、こちらのほうがより現実的ではない。そんな技術があったのなら、ゲーム制作分野に革命を起こしている。 「気色悪いな……」  得体の知れないゲーム。時間が戻って余裕はあるものの、今日はこれ以上プレイする気になれなかった。クソゲーを捨てるのは惜しいので、いつかはやるだろうが。  そんな気色悪さを打ち消したくて、ベッドから降りた真緒は風呂場へと足を向かわせた。朝済ませようと思っていたのだが、時間もあることだし丁度いい。  謎のゲームのことを考えながら、脱衣所の扉を開く。と、なぜか点けっぱなしになっていた照明の光に少し目を細める。 「……ああ、おかえり」  そういえば、風呂に入っていたのだったか。バスタオルで髪を拭く仕草のまま固まっている目の前の女に軽く声を掛ける。生まれたままの姿の女は髪先から雫を垂らし、その体勢のまま言葉を返してきた。 「た、ただいま……?」 「いや、つーか出掛けてねぇよなお前。なんだ、じゃあ、ただいまか」     
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