0000 ラシュタットの白き英雄

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「……いっそのこと称号なしか、なんかやたらめったら長いやつの方が親しみが湧くな。無駄にシンプルだと逆に狙ってる感じがすんだよ」 「ふぅん……英雄様の考えはわたしにはちょっと分かんないや。あーあ、わたしもなんかそういうの欲しいなー」 「はっ、赤い彗星とかか?」 「あ、それいい!」  冗談で言ったつもりが思いの外気に入られてしまって内心戸惑う。が、まあそんなことはどうでもいいか、と早々に切り捨てた。そもそも、これも全てただの暇つぶしだ。 「一体、いつまで歩けばいいんだ……?」  そっと独りごつ。そんなジークハルトの心中に呼応して、というわけではないが、唐突に足元が闇に呑まれた。 「――やっとか」  周りの仲間が騒ぐ中、ジークハルトはやれやれといった様子で成り行きに身を任せる。強者の貫禄とでも言おうか。これからなにが起きようと自分は死なないと確信している顔だった。         × × × ×  暗闇に包まれてから数秒が経過し、目が慣れてきた。元々気配を察知してはいたが、改めて肉眼で全員が無事なのを確認し、周囲を見回す。  緊張した面持ちでジークハルトと同じように周囲を警戒する面々は、アイコンタクトを交わし、魔法で光源を生み出した。 「へえ……」     
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