0000 ラシュタットの白き英雄

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 ジークハルトは仲間たちを見て感心したように息を漏らす。そんなジークハルトにアマーリエが自慢気に胸を張った。ジークハルトが、見た目よりも成長していないな、などと脳内で場違いな感想を述べたことなど知らず、彼女は口を開く。 「この程度の魔法ならわたしだって使えるんだよ? ジークハルトには及ばないかもしれないけど、わたしたちだって名の知れた冒険者なんだから。今回は白き英雄様の出番はないかもね」  ――劣等感でも持っているのだろうか。とジークハルトは思う。  確かに、今回のこのパーティーのメインはジークハルトであり、彼こそが主人公であとはおまけのような扱いだったが、彼自身はそう思ってはいない。とは言え、パーティーメンバーの実力が気になってはいたので、少しほっとしたのだが。 「ああ、期待してるぜ」  ジークハルトが裏表のない笑顔で笑いかけると、アマーリエは拍子抜けしたような顔をして微かに頬を赤らめた。 「わ、分かればいいんだよ、うん……頑張る!」  可愛らしくガッツポーズをするアマーリエにジークハルトは微笑む。そんな二人のやり取りを見ていたのか、周りのメンバーも少し肩の力が抜けたようだった。  しかし、今現在罠にはまっているという状況に変わりはない。必要最低限の緊張感を残しつつ、それぞれが上を向く。     
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