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「私です! クリスタです! どうか……どうか、正気に戻ってください!」
長い髪を揺らして必死に叫ぶ彼女に、ルカは乾いた笑いを零す。
「はは……久しぶりだね、クリスタ。一つ、勘違いを正しておこうか……別にぼくは血迷ったわけじゃないよ。洗脳されているわけでもない」
「洗脳されている者は……自身が洗脳されていることには気づかないものです……」
「確かに。なら、これ以上の問答に意味はないね。ぼくはぼくが洗脳されていないことを証明出来ないし、きみもぼくが洗脳されていると証明することが出来ない」
「それは……っ」
ルカの言に反論が浮かばなかったのか、クリスタは悔しげに下唇を噛む。二人のやり取りが終わったのを見計らってジークハルトが再び口を開いた。
「で、どうしたら出してくれるんだ?」
「きみが死んだら出してあげるよ」
間髪入れずに返ってきた答えに一瞬言葉が詰まる。が、早々に気を取り直してジークハルトは首を振った。
「それは無理な相談だな。いざとなれば……壊せない強度ではないだろうし」
「こんな密室で暴れれば、きみ自身もその仲間も無事じゃ済まないよ?」
「それしか方法がないのなら、それは仕方のないことだ」
あくまで冷静に言葉を返すと、ルカは感情の伴わない無機質な声で言う。
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