0000 ラシュタットの白き英雄

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 あっけらかんとした調子で言うルカに寒気を覚えた。人の命を賭けて平気でいられる神経も、自分の命を賭けてまでこいつに尽くす協力者の気持ちも、はっきり言って理解出来そうにない。  ――まあ、そういうもんか……。  まるで、小説の登場人物の心情が理解出来なかった読者みたいに理解出来ないことに片をつけて仲間を見渡す。 「これで、大体の説明は終えたかな。まあ、きみが死ねば万事解決だよ」 「それだけはねぇよ。だいたい、どうしてそこまでして俺を殺したい」 「きみたちが脅威だからだ。きみがいなければ、他の連中なんてたかが知れている。他の連中がいなければ、単騎のきみなんて恐るるに足りない。この方法ならどちらかを削れるだろ」 「……趣味が悪いな」 「自己防衛のためだよ。まあ、ぼくの協力者を除いて一人の犠牲も出さずに抜け出す可能性に賭け、ひたすら長考するといい。いつまでその状態を続けてられるか知らないけど。それじゃ、ぼくは――」  ルカの台詞が途切れる。それは別に聞こえなくなったからなどではなく、単にルカが言葉を失ったというだけのことだ。なぜ彼が言葉を失ったのか、それは剣を振るった後の姿勢になっているジークハルトの瞳に映る光景が答えてくれる。  ごとり、と鈍い音を立てて白髪の長い髪を持った頭部が転がった。血飛沫が上がり、頭部を失った身体は力を失って蹌踉(よろ)めき地面に倒れる。  叫声。     
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