0000 ラシュタットの白き英雄

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0000 ラシュタットの白き英雄

 少し長めの銀髪を靡かせた青年が仲間を連れて森の中を歩いていた。身に纏う純白の鎧には傷一つなく、降り注ぐ木漏れ日を反射して煌々と輝いている。  名はジークハルト・ヴァイデンライヒ。ラシュタットの白き英雄と呼ばれる男である。  特に敵を警戒するでもなく堂々と突き進んで行く様は、確かに英雄らしい。そんな様子の英雄様に、ただ黙々と着いてきていた仲間の一人である赤髪の少女――アマーリエ・ハインツェが声を掛けた。 「余裕だねぇ。さすが白き英雄」 「アマーリエ……。その呼び方はやめろ、恥ずかしいんだよ」  本気で嫌そうな表情のジークハルトを見て、アマーリエはボブカットの赤毛を揺らしてくつくつと笑う。少し尻のつり上がった猫目に、鼻筋の通った端正な顔立ち。文句なしの美少女である彼女の笑顔は、からかわれていると分かっていても悪い気はしない。 「ごめんごめん! でも、わたしはいいと思うけどなぁー、白き英雄。かっこよくない?」 「よくねぇ……。二番煎じっつーか、中途半端っつーか……」 「じゃあ、なにならいいのよ」  むぅっとわざとらしく頬を膨らませて拗ねた様子でそう問いかけると、ジークハルトは少し考え考えした後に口を開く。     
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