AMANDA

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リカルド・サントスは地元出身のダンサーだ。 体の芯を保ったまま、且つ重心を失わないように動きを繋げていくスタンダードなジャズダンスを得意としている。 スラリと姿勢を保ったまま踊る姿が、とにかくカッコ良く見えた。 彼がローカル番組で一度だけ踊った時のビデオが、僕のダンスの教科書だ。 リカルドのスタジオは幸い学校から自転車で通える距離にあり、初めてのレッスン日は午後の授業をサボり飛んで行った。 鏡張りの練習室で待ち受けていたリカルドは、僕を目に留めると上から下までじっと眺めた。 憧れの人に見つめられただけで、僕は卒倒しそうだった。 「君、いつもバッグを右に掛けているのかい」 彼はハンサムな顔を顰めてそう言った。 そう言えば、声は聞いたことがなかった。 高くもやたら低くもない、普通の男性の声だ。 「身体が右に傾いている。リュックを使うか、反対の肩にも掛けるようにしなさい」 すごい。見ただけで判るんだ。 やっぱり、プロだ。 僕はドキドキしながら着替えて、彼の振り付けに臨んだ。
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