第一章 月島神社の神シオツチ降臨

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母さんに挨拶しないと。  リビングに仏壇があり、そこには母さんの遺影がある。  にっこりと微笑んでる遺影で優しさが溢れ出ている。 「母さん。今日から新しい学校生活が始まるよ。いろいろあると思うけど見ていて欲しい」  手を合わせて報告を済ませる。報告はなくても毎日手を合わせるのは日課。  イスに座り改めて朝食に眼を遣る。 「母さんに手を合わせたのか?」 「私はもうやったよ」 「そうか。いただきます」 「いただきます」  白米を食べつつ焼き鮭を口に入れる。 「うまい!」  この焼き加減といい程よい甘さ。 「亜海菜。うまいぞ」 「そう。良かった」  さすが、亜海菜は昔住んでいた家でばあちゃんに料理を叩き込まれただけある。  卵焼きも甘い。俺は卵焼きは甘いのが好みである。  亜海菜はそれを知っているから甘くしてくれてる。  味噌汁にも手を伸ばし飲んでみると味噌の味がしっかりとしている。 「お弁当作っておいたから持っていってね。それと、残さず食べること。わかった?」 「はいはい」  お前は俺のお母さんか! 「っておい。俺の嫌いなニンジン入ってるのか?」 「当たり前でしょ。食べられないってお兄ちゃん子どもすぎ。きちんと食べなさい!」 「最悪だ」  小さい頃からニンジンの臭いと味だ。独特で未だに慣れない。 「食べないと許さないからね!」  妹の威圧感が怖い! 昔は俺を追っかけて可愛かったのに……。  朝食を食べ終わり歯磨きも済ませる。改めてバックの中身を確認する。 「忘れ物はないな。弁当も入れたし」  おっとネクタイ忘れるところだった。  ネクタイを締めるため大きな鏡の前に立つ。 「これでよしと!」 「お兄ちゃん。曲がってる。ネクタイもちゃんとできないの? こうやるの」  前からネクタイを正す亜海菜。 「自分でできるって」 「出来てないから私がしてるの!」  亜海菜は真剣な顔でネクタイを正して真っ直ぐにしてくれた。 「これでいいよ。私がいて良かったでしょ?」 「一人暮らしの方が良かったです」 「もう! お兄ちゃんのいじわる!」  ぷんぷんと怒って行ってしまった。 「先行ってるからなー」  返事はない。それでも俺は学校に行く。  さて、新しい学校生活の始まりだ!
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