第一章 月島神社の神シオツチ降臨

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「ちゃんと整理するんだよ」 「分かってるよ。あと、一段落したら俺は散策するから」 「はいはい。夕飯までには帰って来るんだよ」 「お前は母親か!」  ツッコミを入れるお兄ちゃん。 本当に私がきちんとしないとダメになってしまうから困るけど、私は妹だからお世話出来るから嬉しい。  これは、妹の特権だよね! 「よっし! これからお兄ちゃんのために頑張らないと!」      まずは、この地域の地理を把握することは大事だ。  俺は引越しの荷降ろしが終わったため散策しに外に出た。 「本当に前住んでいた町より住宅が多いな」  辺りを見渡し歩いている。  住宅街の付近では小さな子どもたちがかけっこや、自転車に乗って遊んでいた。  住宅街の狭い道路のため車通りも少ないのだろう。 「ん?」  歩いていると鳥居が見えた。  丘の上にある神社の入り口には、石造りの鳥居があり厳かで参拝する人を待ち受けている感じだ。 「ここに引っ越してきたことの報告しないと。いつも母さんが言ってたな。神社にお参りは大切なことだと」  俺は鳥居の前で一礼し鳥居を潜った。  真ん中を歩いてはいけない。真ん中は神様の通り道と言う教えを母さんから受けていた。  幼き頃の教えを覚えている。でも、今ではその母さんはいない。  俺が小学生の時に亡くなってしまった。それでも、母さんとの思い出は俺の中で生き続けている。  階段を上り見えてきたのは社殿、その右には手水舎があり清めのため手を洗った。 「冷た!」  四月になったばかりで少しだけ外の空気に寒さはまだ残っている。  そこに冷たい水を手に掛ければ冷たい。  手を清めた後端を歩くと小さな祠が左右に二つあった。 「稲荷?」  稲荷とは狐を神として祭っていることだ。 「ここは稲荷神社なのか?」  真っ直ぐ進み社殿の前まで来ると、財布からお賽銭を入れる。  本坪鈴をガラガラと鳴らし二礼二拍手一礼をした。 「ここに引っ越して来ました。香坂祐也です。これからよろしくお願いします!」  手を合わせ拝み終わり身体を反転させ帰ろうとすると。 『おいおい! お前、ただ金を出して終わりか? お供え物とかないのか?』 「えっ?」  いきなり、声が聞こえ振り向くが誰もいない。 「だ、誰だ?」  俺は誰もいない社殿に向かって言った。
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