第2話 交差する殺意(前編)

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 「あれ、すぐに使うのかな?」  学校へ持っていくものとばかり思っていた僕は、首を横に傾げた。  少年は、買ったばかりのカッターを手に掴むとチキチキ……と刃を出して見つめている。  同時に足が小刻みに震えていた。  「まさか自殺しようと……」  「違う」  僕が予想した嫌なシナリオを、あやめが即座に否定する。  あやめの瞳は、殺意が自分自身に向いているか否かも見抜けるのだろう。  あやめの言う通り、少年は、カッターの刃をすぐに戻してしまった。  しかし、少年は、何かを決意したような、一方で悲壮感も併せ持つ様子で佇んでいる。  どうするつもりなんだろう。  「分からない。  直接訊いてみて?」  そう言うとあやめは、建物の影に隠れていた僕を突き出した。  「わっ、ちょっ!」
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