第3話 交差する殺意(後編)

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 潰されてしまったかもしれない股間を両手で押さえつつ、少年は少女に突進する。  「えっ!?」  少女が驚嘆の声を上げた。  少年は、目の前に立つ少女に突進せず、横をすり抜けて、逃げるように走る。  「ちょっ、待ちなさいよ!」  少年が向かっているのは、路地裏の奥、自ら追い詰められてしまう方向だ。  そうか。  少年の意図を理解した僕は、少年が、巧みなプロセスでこの状況を作ったことに驚いた。  おそらく、この作戦は上手くいく!  少年の前方には、少年が予め用意していた“仕掛け”があったから。  これが僕と少年で考えていた“地の利”を活かした作戦。  というか罠を用意していただけだけど。  袋小路に追い詰めたとばかり考える少女が仕掛けを踏む。  次の瞬間、バランスの悪い細い棒で立て掛けていた木箱や板などが少女に降り注ぐ。  「きゃあああっ!」  少女は、ガラクタの下敷きになってしまった。  動けない少女の目前で、少年は屈むと、ポケットから取り出したカッターを突きつける。  チキチキチキと刃を伸ばしてゆく。
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