第3話 交差する殺意(後編)

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 「私の……負けね」  カッターナイフを見つめ、臆することなく、少女が敗北を受け入れる。  「そう。君は僕に殺される」  少年は、落ち着いた低い声で告げた。  決闘に破れた者への運命を。  「そうね。それが決闘の約束よ」  少女は、自らの死を受け入れているように、穏やかな口調で話した。  「僕はもう、君の玩具(おもちゃ)じゃない!」  少年は、カッターを振り上げた。  少女は、死ぬことを受け入れているように穏やかにそれを待つ。  あの子は、死を受け入れている!  空気の緊張が広がる。  しかし、カッターが振り下ろされることはなかった。  代わりに零れ落ちたのは涙。 「ごめんなさい、お兄さん!  僕は、やっぱり人間止められません。  僕は、彼女が好きだから。  僕は、彼女の玩具でいたいんです」
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