87人が本棚に入れています
本棚に追加
何者かに命を狙われている少女の名前は、藤崎由樹菜(ふじさき ゆきな)という。
藤崎家は、日本だけでなく海外にも広く展開する大手商社を経営しており、由樹菜は、由緒正しき極上のお嬢様。
制服姿なのに感じた高貴さは、このためだろう。
僕とあやめ、由樹菜とナオという少年は、由樹菜の屋敷へ向かうタクシーに乗っていた。
あやめが、僕も同行することを条件に了承したからだ。
あやめの瞳の輝きから、由樹菜にただならぬ好奇心を抱いていることが分かる。
それもそうだ。
交差点で何週間も気になっていた、“複数から殺意を向けられる少女”の家へ行くのだから。
「ごめんなさいね」
ナオの頬に丸形バンドエイドを当てて、由樹菜が謝る。予め救急セットを持っていたらしい。
「大丈夫。認めてもらえて嬉しかった」
痛々しい顔のナオが、それでも笑顔で話していた。
「その、潰れてはいないんだよね?」
僕が、念のため小声で訊ねると、ナオはそっと頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!