第4話 殺意の館(前編)

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 何者かに命を狙われている少女の名前は、藤崎由樹菜(ふじさき ゆきな)という。  藤崎家は、日本だけでなく海外にも広く展開する大手商社を経営しており、由樹菜は、由緒正しき極上のお嬢様。  制服姿なのに感じた高貴さは、このためだろう。  僕とあやめ、由樹菜とナオという少年は、由樹菜の屋敷へ向かうタクシーに乗っていた。  あやめが、僕も同行することを条件に了承したからだ。  あやめの瞳の輝きから、由樹菜にただならぬ好奇心を抱いていることが分かる。  それもそうだ。  交差点で何週間も気になっていた、“複数から殺意を向けられる少女”の家へ行くのだから。  「ごめんなさいね」  ナオの頬に丸形バンドエイドを当てて、由樹菜が謝る。予め救急セットを持っていたらしい。  「大丈夫。認めてもらえて嬉しかった」  痛々しい顔のナオが、それでも笑顔で話していた。  「その、潰れてはいないんだよね?」  僕が、念のため小声で訊ねると、ナオはそっと頷いた。
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