第4話 殺意の館(前編)

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 由樹菜の両親は海外に住んでいる。  由樹菜と姉は、日本にいるが別々に住んでいて、今向かっている屋敷は、 由樹菜が執事や使用人達と暮らしているという。  何不自由のない生活を送っていた由樹菜だが、ここ数日、 彼女の周囲で不可解な出来事が続いていた。  学校の行き帰りに何者かに尾行られたり、見知らぬ男に夜道を追い回されたこともあるとか。  不信な視線を感じることも少なくなく、それは屋敷に帰っても続くという。  だから由樹菜は、自分に殺意を抱く者が、身内にいるかもしれないと考えた。  「ただ、執事の周防(すおう)だけは信頼できると思います。  周防は、私が幼い頃からずっと一緒におりますので」  由樹菜が、あやめに言うが、あやめは興味なさそうな表情で反応すると、  「全員に会わせてね」  そう言って双眼を由樹菜の目に向けた。  彼女が“殺される人”であることを確認するように。
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