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ロビーでは、由樹菜とナオがソファに座って待っていた。
「夕食まで時間がありますので、軽い食事を用意します。少々お待ちください」
執事の周防がそう言って、使用人達が紅茶を並べてくれた。
「あやめ、食事に危険がある可能性はないかな?
もし使用人達に由樹菜に殺意を抱いている者がいるとすると……」
「ないよ」
小声で訊ねた僕の言葉を途中で遮って、あやめが言った。
「メリットがないから。執事や使用人が彼女に殺意を抱いても、安易に毒殺はしないよ」
そうか。そんな殺害方法を選ぶのなら、これまでに何度でも機会はあったはず。
事故、もしくは無関係の者による殺害を装うなら、由樹菜が危険な目に遭うのは屋敷の外なんだ。
「そういう意味では今日は屋敷も危険だけどね。それでも毒殺はないよ」
僕達やナオのように屋敷の部外者が殺害したように見せるには、客人のいる今日は都合がいい。
あやめは、それを見越して同行を了承したのだろう。
「何か行動を起こすなら、夜だよ」
あやめが、不敵に笑みを浮かべた。
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