第4話 殺意の館(前編)

9/12
前へ
/205ページ
次へ
 ロビーでは、由樹菜とナオがソファに座って待っていた。  「夕食まで時間がありますので、軽い食事を用意します。少々お待ちください」  執事の周防がそう言って、使用人達が紅茶を並べてくれた。  「あやめ、食事に危険がある可能性はないかな?  もし使用人達に由樹菜に殺意を抱いている者がいるとすると……」  「ないよ」  小声で訊ねた僕の言葉を途中で遮って、あやめが言った。  「メリットがないから。執事や使用人が彼女に殺意を抱いても、安易に毒殺はしないよ」  そうか。そんな殺害方法を選ぶのなら、これまでに何度でも機会はあったはず。  事故、もしくは無関係の者による殺害を装うなら、由樹菜が危険な目に遭うのは屋敷の外なんだ。  「そういう意味では今日は屋敷も危険だけどね。それでも毒殺はないよ」  僕達やナオのように屋敷の部外者が殺害したように見せるには、客人のいる今日は都合がいい。  あやめは、それを見越して同行を了承したのだろう。  「何か行動を起こすなら、夜だよ」  あやめが、不敵に笑みを浮かべた。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加