第5話 殺意の館(中編)

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 窓から下を覗くと、庭の木陰で執事が、誰かと話しているのが見える。  執事への疑念が高まる中、月明かりに照らされた男を認識した僕は驚いた。  あいつは、確か……!  「コウイチ、だっけ」  珍しくあやめが覚えていた名前を訊き、僕は確信する。  先日、喫茶店で見つけた、彼女に殺意を向けられていた彼氏だ。  彼女の元カレのタケルという男性を事故で死なせてしまったという。  なぜそいつが今、この屋敷にいる?  いや、まてよ。  タケルさんの姓は藤崎、半年前に亡くなった由樹菜の兄の名前もタケル。  藤崎タケルさんが亡くなった事故は、  妹の入院に駆けつけた際に発生した。  藤崎家は3人兄弟で由樹菜には、兄のタケルと姉が1人いる。  兄のタケルは、コウイチの無謀運転で死に、今度は由樹菜が命を狙われている。  これが、どちらも計画されたものだとしたら。  嫌な想像しか浮かばない。
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