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地震予報が出ている当日が訪れた。
エス氏はいつも通り仕事をしていた。
会社のある場所は自宅同様に震度7の圏内だ。
広いフロアにはエス氏と部長の2人しかいない。
何度も目が合った。気持ち悪いくらいに。
いつでも逃げられるようにドアは開けっ放しにしていた。
私物はコンパクトにまとめ、すぐにカバンにしまえるようにしてある。
昼休みの時間になった時、エス氏と部長は一緒に社員食堂に入ってみたが、予想通り中は真っ暗で、うなだれながら外に買い出しに向かうことになった。
しかしどこまで歩いてもコンビニやレストランはクローズだった。
すれ違う人もほとんどいなく、時々見かけると昔からの気の合う知人であるかのように互いに深々と会釈をしていた。
運命共同体としての意識が、見ず知らずの人との結束すらも固くしていた。
「参りましたね」エス氏は途方に暮れていた。
「以前買ったカープラーメンがデスクの引き出しの中にまだ残ってるかもしれないから、それを一緒に食べようか」部長は苦笑いしていた。
「いいですね」
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