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10年後のある日、母親から一郎に電話があった。十郎が脳梗塞で倒れて、救急車で病院へ搬送されたという。
祖父母のいなかった一郎にとっては、十郎夫妻は本当の祖父母のような存在だ。一郎と母親、ばあちゃんの3人は急いで駆けつけたが、病状は重く昏睡状態となり、面会謝絶となった。
一時は危険な状態になったものの、幸い一命をとりとめ、3日後に面会謝絶が解除された。
3人は早速面会に来たが、十郎が目を覚ましたわけではない。神経内科の病室で、十郎のやつれた顔をただながめることしかできなかった。
そこへ、十郎の主治医が入ってきた。
「あ、柴田十郎さんのお身内の方々ですか? 主治医の小林です」
「このたびは、ありがとうございました」
3人は、静かに頭を下げた。
「主人の具合は、どうなのですか?」
ばあちゃんが聞くと、先生は顔をしかめた。
主治医いわく、容体は安定しているので、もう目を覚ましてもいいはずなのだが、まだ目を閉じたままだそうだ。
「もしかしたら、心の問題かも知れません」
その言葉にばあちゃんはピンときたが、一郎たちがいたので、口に出そうとした声を飲み込んだ。
ともかく、安定していると聞いたので、一旦帰ることにした。
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