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私は最低だ。 妹に手を上げた。 姉失格だろう。 母は気づいていない。私の心に悪魔が眠っていることを。 「沙織、ごめんね。お母さん、ちょっと、具合が悪くてご飯作れそうもないのよ。」 病弱な母は、ソファーに体を沈め申し訳なさそうに顔を歪める。 「ううん。大丈夫。お惣菜買ってくる」 母の手作り料理が好きな私にとってはすごく残念なことだが仕方ない。 「本当にごめんね。お父さんには言ってあるから大丈夫」 父の名前を出され私は嫌な顔をしてしまった。 父は帰ってくるけど基本的には仕事人間のためあまり、いい印象がない。妹には特別甘いようだけど仕方ない。 彼女は天使の生まれ変わりだから。 妹が他人とは違うと感じたのは私が小学校を卒業する頃。 言葉らしい言葉は発せず、トイレも一人ではいけない。 食事とて母の手を借りなければいけないのだ。 けれど、その代わりといってはなんだが、妹は特別可愛らしい。 表情筋があまり、使われないせいか頬はプクプクとしており、笑うと小さなエクボができる。そして、警戒心が皆無なため人懐っこい。 だからか、父は妹を天使みたいだと表した。 私は根暗で地味なためあまりいい顔はされない。 おはよう、おやすみなどの挨拶はするが、それだけ。 「わかった。どうせ、外で食べてくるんでしょう?」 そう聞くと母も困ったように笑い頷く。いつものことだし、父がいなければ楽なのでそれはそれでいい。 それに私は父が帰ってきた時に匂う香水の香りが苦手だ。 キツい薔薇の匂い。 顔を顰めてしまい、よく父に睨まれる。 「なんだ、その顔は」 父が出す神経質で低い声は私の苦手な雷よりも怖い。
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