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世の中にはたくさんの食べ放題の店がある。
変わり種の店もまた。
チョコレートを30分食べ放題で、紅茶が1杯だけついて800円という店がある。
お茶のおかわりは有料だ。
誰も来ないような店だが…女性の変わり者は立ち入ることがあるらしい。
扉を開けるだけで、チョコレートの匂いが立ち込める。
目の前には、巨大なテーブルと皿。
皿の上にはチョコレートの山。
それはトリュフでもあり、板チョコでもあり…一口サイズのチョコでもある。
様々な種類と硬度と食感を持つチョコレートの集まりがテーブルの皿の上で山に積み上げられていた。
客はスコップでそのチョコレートの山を崩しながら、自分の皿に取り分けていく。
スイーツバイキングをしゃれこむわりには、デリカシーのかけらもない。
そんな客は、やって来るなり席についてはひたすら貪るようにチョコレートを口に詰め込む。
チョコレートしか食べられない…だのにチョコレートを必死で食べる。
口の中がねばついても、喉が渇いても、チョコレートの強すぎる香りに鼻が参っても…チョコレートを口に放り込んで溶かして飲み込む。
何がそんなに必死なのか分からない。
むしろ、ひたすら元を取ろうと必死なのだろうか…30分しかないから。
いたたまれないが、こんな店に来た自分も同類だろう。
私もチョコレートをすくいながら、一番元を取る方法を模索している。
たくさんのチョコレートは、おそらくバレンタインの売れ残りを買い上げた残骸か…安物しか見かけない。
ひとつ50円から100円として、紅茶代を含めても30分で板チョコ4枚は食べないと割に合わない。
とても無謀な挑戦だ。
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