第1章

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そもそも、私はなぜそんなにチョコレートを食べようかと思ったのかといえば…手軽で安いからに他ならず。 3桁の食べ放題なんてここぐらいしか見つけられず、大抵の食べ放題は1000円ほどのランチか4000円ぐらいのディナーだと思う。 あとはドリンクバーぐらいか。 私も、冷静に考えてみれば馬鹿なことをしたものだ。 チョコレートにどれだけの価値があるか分からないが、単一化したお得感にしてはかなりお粗末な気もする。 一瞬、詐欺を疑ったが…他の誰も気づいていない。 ただ、ちらほらと客が貪るようにチョコレートを口に運んでいる…異様な光景だ。 そもそも、私が別の世界に迷い込んだのか。 チョコレートを食べないと、法で裁かれる世界にでも来てしまったのか。 いやいや、そんなわけはない。 彼らはチョコレート好きかなのは私には分からない…彼らとは話したことさえない。 ただ、チョコレートが無性に好きだとか有名パティシエ作のチョコレートが混ざっているかもしれないとかカカオポリフェノールの健康効果を信用しているのか…アロマテラピー効果を期待しているのか失恋のウサ晴らしかチョコレートをいくら食べたかという武勇伝めいた自慢話を増やしたいだけか。 人間は法で縛られるでもなく…なぜチョコレートを食べるのかという理由は人の数だけあるのだろうが、損害が確定した私はひたすらどうでも良い思考を巡らせる。 悟ったように人生哲学に耽っているぐらいなら、一枚でもチョコレートを食べる方がよほど経済的と言えようが。 チョコレートを食べるという直接的に栄養物を摂取する行動より、こんなどうでもいい思索の時間の方が私には有益だったらしい。 仕方ないので、ゆっくりとチョコレートに魅せられた人間のショーでも楽しみながら紅茶を飲むことにした。
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