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「ほら、明日は早いんだから、もう寝ないと」
いつまでも話の尽きない私たちに、母が眠そうに言ったのは深夜の二時を過ぎた頃だった。
朝になれば、この家ともお別れ。
地球の裏側からでは、帰りたいと思ってもおいそれとは帰ってこられない。
「しいちゃん、手を繋ごう?」
姉の言葉に「うん」と答えて、布団の中でモゾモゾと姉の手を探した。昔、四人で寝ていた時のように。
「お母さんも」
反対隣からも声がかかって、笑いながら右手も伸ばした。
母の手も姉の手も温かい。
「ありがとう」
こみ上げた涙に声が震えた。
『ごめんね』じゃなくて『ありがとう』。
今までずっとずっとありがとう。
二人も同じようにありがとうと言って泣き出したから、結局私たちはほとんど眠れないまま朝を迎えた。
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