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「いいお天気で良かったね」
翌朝、あの日と同じように花びらが舞い散る中、姉と一緒に桜の木を見上げた。
「ブラジルにも桜ってあるのかな」
「サンパウロの桜まつりって有名みたいよ。八月らしいけど」
私よりも姉の方が詳しくて笑ってしまう。きっと私を心配していろいろ調べてくれたのだろう。
「しいちゃん、お母さんのことは任せて」
あの時と同じ桜の木の前で言ったのは、きっと偶然じゃない。ずっと私が気に病んでいたことなんて、姉にはお見通しだったんだろう。
ふわりと花びらを舞い上げた風が、大丈夫だよと背中を押してくれた気がした。
「うん、ありがとう。お願いします」
胸のつかえは、もうどこにもなかった。
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