桜舞うとき

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*** 「すみません。僕が海外赴任になったせいで」 結婚式の後、成田まで見送りに来てくれた母と姉に、泰隆さんは何度も頭を下げた。 「良かったですよ。そうでもなければ、この子は結婚に踏み切れなかっただろうから」 姉の言葉に母もそうそうと頷く。 私が泰隆さんからのプロポーズを断り続けていたことは、二人とも知らないはずなのに。 「泰隆さん、しいのこと頼みます」 ハッとして姉を見ると、あの日と同じように怖いぐらい真剣な目をしていた。 「はい、お任せ下さい。必ず幸せにします」 背筋を伸ばした泰隆さんが、あの日の私のように大きく頷いた。 心の中でふわりと桜が舞った。 END
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