エクストリームNO・GU・SO

7/30
前へ
/30ページ
次へ
「そろそろ話してもいいかな?」  熱気覚めやらぬ会場に落ち着いた声が響き渡った。 それを合図に人々が席に着いていく。 スクリーンの中で見せた並外れたカリスマ性はステージ上でさらに遺憾なく発揮されている。 まるで指揮者だ。 観客はまるで博士が振るう指揮棒に従う楽団員だ。 「今日は私のEX3PO(エクストリーム・エクスクリーターズ・エクスポ)へようこそ。 いや、 それは私が勝手に言ってるだけで、 今日の講演は、 実際には、 シンキング・エクスクリーション・ディッファレントリー、 それとも、 トライ・エクスクリーション・ダイナミックウェイだったかな。 とにかく何かそんな感じの名前のイベントと似たものでしょう。 正直、 私にとって集まりの名前はどうでもいいことだ。 私が話したいのは、 つまり私が皆さんとこの場で共有したいのは、 皆さんと私を自由へと導く素敵な体験の話だけです」  回りくどい語り口は博士の持ち味だ。 観客はよくわかっている。 アメリカでの講演なら膝を叩きながら笑い出す観客がいるはずだ。 ここは日本、 皆おとなしく、 同時通訳が翻訳する博士の声に熱心に耳を傾けている。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加