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「――もしもし?」
口の中から彼の声が聞こえた。
私は、開口一番、自分の一番伝えたかったことを、チョコレートが解けないうちに急いで喋った。
「あのね! 私はあなたが好き! 付き合ってほしいの!」
そこで通話は切れた。
すると背後から
「いいよ」
と声が聞こえた。
振り返るとそこには彼が居て、にっこりと笑っている。
「え……いいの? こんなにだらしない女でもいいの?」
私が言うと、彼はため息をついた。
「初めは僕もそう思ったんだけどさ、なんでだろう……」
夏の日差しが、彼を眩しく照らす。
「きみと話していると、僕はいつでも甘い気持ちになれるんだ」
甘かったのはチョコレートか、はてさて。
ちなみにこのチョコレートは、しばらくして販売停止になった。
カカオ豆同士が会話してうるさいからって、現地の住民が育てるのを嫌がっちゃったのが原因らしいが、真相は分からない。
一つだけ確かなことは、そんな彼と私は、今でも甘い生活を送っている。
来月結婚する私たちは、結婚式のケーキを発注した。
「ケーキの種類は何にしたんだ?」
彼が結婚式場のパンフレットを見ながら尋ねる。
私はにやりと笑った。
「そりゃ、もちろん……」
それを見て、彼もピンときたようだ。
私たちは、声を合わせて言った
「チョコレートケーキ!」
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