2人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
青と白
野球が、好きだった。
それも今では昔のこと。
昔から使っているポケットラジオからは、途切れ途切れに、野球中継の音が聴こえる。
久賀諒平はため息をついてから、学ランの胸ポケットに手を伸ばした。煙草だ。
(そういえばこないだ、佐藤が見つかって謹慎になってたな…)
見つかったら面倒なことになるのは知っていたので、伸ばした手を頭の上にやった。校舎を囲んでいるフェンスに、もたれかかる。
最近は校則やらなにやらが以前よりずっとうるさくなったらしく、謹慎になった佐藤は坊主頭になった上、二週間の自宅学習を命じられていた。
(まあ、それもいいんだけどね。サボれるわけだし)
空。青い空に白い雲が浮かんでいる。灰色を抱えた入道雲が、東の空に見えた。
そういえば、もう、夏である。
校舎裏。時計の針は、十六時を差そうとしていた。
「諒平か?」
突然の声に、久賀の体はぴくりと反応した。
しわがれた声だった。自分の名前を確かに呼んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!