第二章 ヒロくんの場合

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 ヒロくんの歌が終わった。  アルバム契約も結んでいたから、きっちり12曲。  バラードとポップスを織り交ぜた、見事な構成だった。  これなら依頼人も満足するだろう。 「いい歌うたったろ?!悪くないだろ?!助けてくれよ!なんでもするから!俺のこと好きならちゃんと彼氏になるから!」 「ほんとに?」  舞台の袖から、デコレーションケーキみたいな服装をした女が出てくる。  いや、女の子、だな。  金っていうのは本当にどこにあるのかわからねえ。 「ヒロくんの歌、すごくステキだったよ。  ヒロくんはアヤカを彼女にしたいの?」  女の子がにっこりと笑って、殴られ崩れたヒロくんの顔を覗き込む。  砂糖菓子みたいな笑い方だった。 「……え、おまえ、だれ、だよ」  ヒロくんの目がさっきとは違う恐怖に見開かれた。 「誰だよおまえ。俺、おまえのことなんか知らねえよ!おまえになんかなんもしてねえよ!人違いだこんなの!」 「うん。ヒロくんはアヤカを知らない」
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