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ゲームの始まり Ⅳ
フォンファは新宿の迷路のような街をすいすいと走っていく。
私はそれについていくのが精一杯だ。
住み慣れた街のはずなのに、どこも見覚えがない。
そして、フォンファもそのたぷたぷとたるんだ体からは信じられないほどの俊足の持ち主だった。
彼女より20歳は若い私でも、この速度は息が切れる。
「遅い!ついてこなきゃ助けられないよ!」
噂は本当だった。
フォンファは本物の『なんでも屋』だった。
『逃がして。助けて』と哀願する私に、『『自由』は高いよ』と平然と言い放った。
※※※
『それ』に気づいたきっかけは些細なことだった。
私は田舎の平凡な女子高生で、希望していた短大の栄養学科に進学し、在学中からはじめていたレシピブログがきっかけで、今は細々とながら『料理研究家』を名乗って仕事をしていた。
幸せだった。
雑誌への寄稿、自宅マンションで行う料理教室、たまにレシピ監修としてモニターに映る自分の名前。
好きな男もでき、その男との仲も順調で、次の正月にはお互いの実家に行こうかなんてそんな話も。
そのくらいの時だった。
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