一話 一人目の失踪者

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『――嬉々南女子高生失踪事件。  西暦2017年9月。  長野県上啼市嬉々南村にて、女子高生が失踪する事件が発生。  失踪したのは同村嬉々南高校に通う一年生。  学校からの帰宅後、友人に電話で助けを求めたのち、行方不明。  失踪直前の彼女を目撃した者からは、「トンネルの向こうへ行ってしまった」との証言がなされている。  この「トンネルの向こう」という表現には、当地域での伝承歌が関わっているものと思われる。詳細は以下。 「おにごっこしよか おにごっこしよか  あそばぬやつは なかまいり  ひとつ かけはしわたるべからず  ふたつ かたうでさがすべからず  みっつ かよいじぬけるべからず  さりゆくものは かえってこない  むこうがわから かえってこない」  この歌における「かよいじ=通い路」とは、村内から立入禁止地区へと繋がる「上啼トンネル」を指すものとして、村人の間で認識されている。  なお、失踪者の身柄は当該地区においても見つかっていない。  この事件は、後に続く「嬉々南連続殺人事件」とも関連があるとして、調査が続けられている。』
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