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プロローグ 終わりの始まり
眠気が覚め、目を開けると辺りは真っ暗だった。鈍く重たい頭。少し気持ちが悪い。
ここはどこーー?
ついさっきまで家のリビングでお母さんと一緒にオレンジジュースを飲んで談笑していたはずなのに。
お母さん、近くにいるの?
「……っ!?」
声を発しようとして異変に気付いた。話せない。口に布のようなものを何重にも巻き付けられていた。視界の暗さとあいまって恐怖心が深まる。下着だけの姿で仰向けに寝そべらされていることもひどく怖かった。両手両足も細い何かで拘束されている。
お母さんは? どうしてこんなことに?
精一杯周囲の状況を読もうとした。だけどうまく頭が回らない。こわくて苦しい。服も脱がされているから鳥肌が立つほど寒い。秋も終わり、もうすぐ冬がやってくる。
恐怖に染まる心臓の音が耳に大きく響く。それがなおさらこわかった。自分の心音なんて、こんなことでもなければ感じることもなかった。
硬い床の冷たさが、あらわになった肌を容赦なく貫通する。頭が痛くなってきた。
もしかして誘拐された? でもどうして? うちは貧乏だ。身代金目的に子供をさらうならお金持ちの子供を狙うはずだ。だとすると、どうして?
今置かれている状況について、私に考えられるのはこのくらいだった。もっと大人だったら別の考え方もできるのかもしれない。そう思うと子供である自分が無力に思え悲しくなってくる。
昨日10歳の誕生日を迎えたばかりだった。昨日の今頃は楽しかったのに、どうしてこんなことに?
とにかく寒いから何か毛布のような物がほしい。下着はつけてるけど裸同然の格好をさせられている。恥ずかしい。とにかく肌を隠したい。
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