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◇
私は………あなたの娘なの?
そうだよ、きみは僕の娘。名前は奥村瑞希だ。
母さん?………………心労でね。もともと、あまり丈夫な人ではなかったから………僕と初めて会った日を覚えているかい?
僕はあの時、きみを連れ帰るつもりだった。何年も行方が掴めずにいたのに、凍りついていた時間がやにわに融けはじめた。妻が導いてくれたのだと思った。
けれど………けれど、真夏の太陽のようなきみの笑顔が、それをためらわせた。
父は………あの人は………誰?
きみを誘拐した共犯者。
そして、きみのもう一人の父親。
なぜ憎まないの? あなたの人生を壊したのに?
憎んださ。きみを奪われ、妻は死に………犯人を皆殺しにしてやりたいくらい憎んだ。
憎んで、憎んで、いつしか憎み疲れてしまった。
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