邂逅

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 課題で書いた作文よ。担任の先生が、お父さん、……父が淹れるホットチョコレートを呑んでみたいって言ってくれたのが嬉しかった。  お父、父がね、笑いながら言ったの、 「ほぅ、そりゃアタリ(・・・)だ。よかったな、季理」って。  中学生になって、ちょっと成長したけど、あ、ううん、身長の話じゃなくて……え、そんなに伸びた? 初めて会ってから、もう三年経つものね。 そう、髪も伸ばしてるの。クラスで仲よくしてる子に、ロング似合うよって言われて。 ち、違うわよ///、そんなんじゃない/// そうじゃなくて!  中学の先生って、小学校の先生より少しラク。子どもをムリに型にはめないから。たまたま? だからアタリなの? じゃあハズレもいるの? そうなのね……てっきり、先生も成長するんだと思ってた。  ねぇ、おじさんって少し変わってるわね。 そうよだって、ここに座って、わたしの話をただ黙って聞いているだけなのに、いつも嬉しそう。  人の話を聞くのが好きなの? そう、ステキね。わたしも好きよ。特に、父がしてくれる昔話が好き。とっても面白いから。  たとえば? たとえば…………父がもっと若かった頃の話とか。  この街で喫茶店を始める前は、あちこち旅をしていたんですって!  いいなぁ。わたしもいつか行ってみたいなぁ。だあれも知らないところへ……  もう帰るの? わっ、ホントだ、もうこんな時間! 父に叱られちゃう。じゃあね!   あ、そうだ! 今度はお店に来てよ。父のホットチョコレート本当においしいから! 大人のお客さんには、ラム酒を少しいれるんですって! 香りが立って、身も心もポカポカになるからー!
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