邂逅

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◇  ずっと話したかった、真実(本当のこと)を。だが、できなかった。騙すつもりなど毛頭なかった。 もっと、いい形で再会できたら良かったんだが………すまない。  きみを傷つけたくなかった。傷つけずに解決する方法がないか、考えられる限りの検討をしてみた。でも見つからなかった。どうやっても傷つけてしまうと気づいた。  ああ、約束するよ。つつみ隠さずすべてを――真実をきみに話すとね。だからきみも約束して欲しい。真実を知っても、お父さんを憎まないと。  憎めば、きみのこれまでの人生を否定することになる。  お父さんのこと、この世界のこと、きみ自身のことを、決して嫌いにならないと約束して欲しい。  受け入れ難いのは承知だ。急がず、ゆっくりやってゆこう。  この先何があろうと、僕がきみのそばにいるから。 きみが人生の伴侶を見つけるまででいい、きみのすべて、何もかもを僕にも背負わせてくれ。  時間を巻き戻すことはできないけれど、16年分の空虚を少しでも埋めることができるなら――
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